Ciels・Paysages代表 水真 洋子

2002年から4年間、青年海外協力隊の植林隊員
及びNGO《緑のサヘル》の職員として
アフリカは、ブルキナ・ファソで緑化活動に従事。

都市化が急速に進行したことで、都市計画、
都市内の交通網整備、居住環境の悪化など、
多様化した問題が浮上しているアフリカの
現状を知るなかで、改善策の一つとして公園や
広場、街路樹などの《パブリックスペース》は
重要であると確信し、旧宗主国フランスの名門、
1学年50名という選抜基準の厳しい、少数精鋭の
名門校「ヴェルサイユ高等造園学校」に入学し、
造園学を専攻。

そこで、ヴェルサイユ国立高等造園学校付属研究室に所属し、
「日本の公園 におけるフランス造園学の影響 」をテーマに博士論文を執筆。
2017年、ABIES博士大学、博士課程を修了する

文化交流分野においては、日仏間における造園・園芸交流に積極的に従事。
2012年から2015年に、
環境省とヴェルサイユ宮殿間で実施された日仏文化交流事業では、
新宿御苑におけるフランス式庭園復元事業並びにヴェルサイユ宮殿・トリアノンに
おける菊大造り展示事業の2大事業に、専門家兼通訳として参与する。

現在、 日本とフランスで造園(ランドスケープ)に従事する人たちの架け橋となり、
両国の造園従事者の視察コーディネートや講演活動など、
多岐にわたるサポートをするなかで、《豊かさ》を生み出すことを手がけている。

「《豊かな生活》ってなんだろ?」
小さい時から抱いていた問いです。昔から地球の環境問題に興味があり、
自然をテーマにしたテレビ番組を見ながら、こう漠然と考えていました。

「お金がたくさんあったら《豊か》なのかな?」

「貧困で緑が少ない国の人たちは幸せではないのか?」

そんな問いを抱きつつ、私は大学で林学を勉強しました。
緑を増やすことが、《豊かな》生活の一番の基本だと思ったからです。

そして大学を卒業してすぐに国際協力に参加し、
アフリカ西部のブルキナ・ファソという国で植林活動に従事しました。

4年間活動してわかったことは、緑を増やすことは大切だけど、
むやみに増やすのではなく、緑地と住民の生活が
どのように関係づけるか考えないといけない、ということでした。

そして都市の中の緑地空間、いわゆる「庭園」や「公園」、
「広場」といったパブリック・スペースが、人々の住環境をよくするのと同時に、
生活の質を良くし、心を豊かにする重要な役割を果たしている、ということに気づきました。

この気づきがきっかけで、私は公園や庭園を作る人になりたいという思いが強くなりました。
そして長い庭園史と公園史を持つフランスへ、
造園を学ぶために意気揚々と渡仏しました。 2008年のことでした。

晴れてフランスの造園学を勉強するチャンスを手にした私でしたが、学校生活は苦労の連続でした。
ヴェルサイユ国立高等造園学校では、庭園史や植物学、設計演習、造園実習などと
いった造園に関する基礎知識と技術を総合的に学ぶカリキュラムとなっています。

本コースは4年課程なのですが、私が受講したCESPコースは社会人向けコースで、
1年間で本コースの授業・演習・実習を選択することができます。
フランス語のハンディに加え、日本の大学で造園を学ばなかった私は、
全てが未知で、わからないことだらけでした。

困惑している私を助けてくれたのが、学校で新しくできた仲間たちでした。
私が理解できないことを噛み砕いて優しく説明してくれました。

また設計演習でアイデアが形にならず行き詰まっていると、
私の話を聞いて話し合いながら一緒にアイデアを展開してくれました。
課題で追われていると、一緒に学校に泊まって手伝ってくれました。
新しい出会いが、造園の世界の扉を大きく開いてくれたのです。

学校で学びながら、私は次第に造園学の奥深さと造園に携わる人たちの心の豊かさに魅せられていきました。
「もっと、フランスの造園と、造園に携わる人たちの生業について知りたい。」
という気持ちに掻き立てられて、気づくと研究の道へと進んでいました。

研究の分野で出会いの幅がより一層大きく広がりました。
庭師やランドスケープ・アーキテクターだけではなく、施工業者、関連省庁 、
市町村の緑化局、研究者、教育従事者、仏国歴史的記念物主任建築家等、
アーボリスト、森林管理者、苗畑人夫、土壌専門家、農家、アーティスト、などなど、
ランドスケープに様々な立場で関わるプロの方々と出会い、人脈が広がりました。
これらのたくさんの出会いによって、様々な生きた知識や哲学を垣間見ることができました。

出会いによって生きた知識がどんどん学び、新しいアイデアがどんどん生まれました。
これらの知識やアイデアを一つ一つ紡いで、
9年後 「日本の公園 におけるフランス造園学の影響 」というテーマで博士論文を書きあげました。
《出会い》よって生まれた研究といっても過言ではありません。

この9年にも及ぶ勉学生活は、造園が秘めるいくつかの可能性を気づかせてくれました。
そのひとつが造園の《多様性》です。

造園は、社会の様々な要求に対して、科学・技術・美学の理論を活用して、
安全で衛生的で快適に人間が利用できる空間を創造する分野です。
その範囲は、庭園・公園のレベルから国土整備までと多岐に渡ります。
そのため、扱うテーマも大変多様で、 他分野とのコラボレーションが必要となってきます。

そこには《出会い》のきっかけが芽生え、
そして異なる分野が交流する中に新しいアイデアがたくさん生まれてきます。

様々な分野の交流の中で生まれたアイデアを生かして新たな空間をつくる、
ここに造園の秘める未知の可能性の源があるのと思うのです。
これは、造園設計、造園技術、造園研究など、造園全般において言えることです。

私は、この造園の多様性に
《新たな豊かさ》を生み出すカギがあると確信しています。

造園の秘める可能性の中で、私が心うたれたのが、造園のプロの《人間性》です。

造園に携わる人たちは、日本でもフランスでも、みんな大変親切で、
人間が大好きな人たちばかりです。

そして みんな自然を尊重する心を持ち、地球レベルで物事を考えています。
いわば、心に大きな《豊かさ》を持つ人たちなのです。

彼らは自国の風景と歴史、庭園文化に誇りをもち、
自らの仕事や技術・知識について交流することをこよなく愛しています。
そして 皆好奇心が強く、異国の庭園文化や造園史に大変関心があります。
特に日仏間では相互的な関心が強く、フランスの造園のプロの関心は日本へ、
日本の造園のプロはフランスへ、それぞれ向いています。

これは日仏間の良好な国交関係の現れで、
お互いの文化や美術を尊敬し合っている仲、いわば両想いの関係と言えます。

日仏両国の造園のプロと知り合ううちに、この2つの国のプロ同士が出会い交流できたら、
とても素敵だろうなぁ、と漠然と考えるようになりました。
心に大きな豊かさを持つ人たちが、造園という新たな価値観を生みだす分野で交流するということ。
そこにはとてつもなく大きくておもしろい化学反応がおきる予感がしました。
この想いを胸に、私はCiel(シエル)を創設しました。