今年で在仏11年目になります。

現在フランスに長期在住(永住含む)する日本人の数は3万人以上。

みなさまそれぞれに、それぞれの《理由》なるものだろうと思います。

そして、 フランスに住む《醍醐味》もまた、みなさまそれぞれなのだろうと想像します。


例えば、


「おいしいワインが手軽に飲める。」
「おいしいフランスパンが毎朝食べられる。」
「夏が過ごしやすい。」
「美術館の数が多い。」
「教育費が安い。」
「フランス人が相手だと、さほど気を使わなくてすむ。」
「伴侶がフランス人」


などなど。

十人十色。




そんな私にも、フランスに住む醍醐味なるものがあります。


「このためだけにフランスにいるといっても過言ではない。」


と言い切れるくらい大好きなもの。


チーズ?


いやいや。


クロワッサン?


違う違う。


ワイン?


う。。。大好きだけど、でも違います。




それは、



《日本の造園関係者の方々とフランスの庭園・公園をご案内し、フランス人の同業者との交流をお手伝いすること。》


これが心底楽しい。

ご依頼を受けるたびに、 ワクワク感で心がいっぱいになり、夜眠れなるほど。(笑)



これまで 研究者や学校の教員の方、公園・庭園を管理する自治体さんなど、様々な方々の視察をお手伝い(コーディネイト、通訳)させていただきました。

毎回素晴らしい出会いがたくさんあります。

そして、私自身たくさん貴重な経験をさせていただき、多くのことを学ばせていただいています。



昨秋に東京都公園協会さんからご依頼いただき、公園・庭園視察をお手伝いさせていただきました。

東京都公園協会さんは、東京都所轄の公園・緑地・霊園等の管理を担う公益財団法人。

浜離宮恩賜庭園や六義園、旧古河庭園などといった、都内にある歴史的庭園の管理をされています。


今回は、1週間という短い期間に7つの異なる庭園・公園を視察し、5つの管理機関の職員や庭師さんたちと交流するという、大変ボリュームたっぷりの視察をご提案させていただきました。



具体的には


パリ市ブローニュの森・バガテル公園

(image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Parc_de_Bagatelle)



パリ市 オートゥイユ温室公園

(image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Jardin_des_serres_d%27Auteuil)



ヴェルサイユ国立高等造園学校

(image @ http://www.ecole-paysage.fr/site/ensp_fr/index.htm)



ヴェルサイユ「王の菜園」

(image @ https://france3-regions.francetvinfo.fr/paris-ile-de-france/yvelines/potager-du-roi-eternelle-source-inspiration-1268527.html)




ヴェルサイユ大庭園

( image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Jardin_de_Versailles )



ヴェルサイユ大トリアノン庭園

(image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Petit_Trianon)




ヴェルサイユ・プチトリアノン庭園

(image @ https://en.wikipedia.org/wiki/Grand_Trianon)




アモー(王妃の村里)

(image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Hameau_de_la_Reine )



クロッド・モネの庭(ジヴェルニー)

(image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Fondation_Claude_Monet)




各公園・庭園ごとに、庭師主任を始め、専属植物学者、歴史的建築物主任建築家、噴水担当主任など、様々な方々と交流する時間を設けていただきました。


造園のプロ同士の熱い質疑応答が一日中繰り広げられました。

(パリ・バガテル公園にて)


(ヴェルサイユ大庭園・舞台の間の噴水にて)


(ヴェルサイユ大庭園併設の圃場にて)


(ヴェルサイユ宮殿内で、庭園責任者並びに主任庭師との協議 )


(ヴェルサイユ・プチトリアノン庭園内にて )


(ヴェルサイユ国立高等造園学校のピフト校長より学校の歴史について説明を受けている様子 )


特に、王の菜園では、庭師さんと一緒に庭作業をさせていただく日を1日設けていただきました。

やはり、作業を通して交流するのは、 より理解が深まり、そして何よりも信頼関係が築けます。

(王の菜園、休憩の様子。庭師チームと共に。)


(王の菜園、洋梨の収穫)


(王の菜園、果樹の剪定方法について協議 )




今回の視察の焦点となったのは、


《歴史的庭園の管理について》


「いかに歴史的庭園の価値を保護しつつ、後世に継承できる管理していくか。」、という点が大きな論点となりました。

日本同様、フランスでは公園・庭園の管理費の削減が問題となっており、それにいかに立ち向かうか、ということが公園・庭園管理従事者の重要な課題となっています。


日本の指定管理者制度ほどではありませんが、フランスでも外部発注を増やすことで維持管理費を軽減させようとする動きが年々強まりつつあります。

外部発注が悪いとは言いません。

ただ、価格競争に陥りがちになるという現状があることも事実。

破格値で受注したものの、理想的な管理方法を行えず 、止むを得ず予算内に抑えた管理手法を取らざるを得ない企業も少なからずあります。

「どこまで外注に頼むのか?」

これがなかなか難しいところ。



歴史的庭園で勤務する庭師さんのほとんどが、外部発注には奥手です。

ヴェルサイユ庭園の場合、夏季の季節労働者を除いて、ほぼ全て直営庭師さんで賄っています。

外部の企業に発注するのは、大型の機械を必要とする作業のみ。

例えば、カーテン式剪定です。

レーザーを用いた特殊な機械で、まっすぐに剪定してきます。

(剪定の様子)


東京都公園協会さんと各庭園のフランス人庭師さん。

互いに庭師であり、管理者である彼らは、技術的なことから概念的なことまで様々な内容を話し合いました。

印象的だったのが、今回視察した全ての庭園で、協議が深まるにつれて、内容がより哲学的な部分へと進み

「今日の社会にとって、 庭園とは何か?」

「庭師の使命はなにか?」



といった、本質的な協議にまで進展したことです。

庭師というお仕事を心から尊敬している私にとって、尊敬する方々同士が、両国の庭園や公園をよりよくするために、熱いトークを交わし合う。

そういう場に同席させていただき、全力で通訳させていただくことが、私にとって本当に至福の時間でした。

「あぁ。私、今死んでも悔いなしっっ」


と思ったこと数回。

と本当に心の底から幸せな気持ちに包まれます。




また、喜んでいるのは、私を含めた日本人側だけではありません。

フランスの関係者の方々もまた、とても喜んでいます。


フランス人庭師に取って、志を共にする日本人の庭師さんと交流することが、大変いい刺激になるそうです。

特に、庭師という仕事は、あまり表に出ない仕事。

「わざわざはるばる地球の裏側から、自分たちの庭を訪れてくれて、自分たちの仕事に関心を寄せてくれる。」


という感動のような思いが、フランス人庭師さんたちにあります。

日本人庭師さんとの出会いによって、視野が広がり、とてもいいエネルギーが湧くそうです。



また、日本人の庭師さんの言動一つ一つが、彼らにとってとても刺激になります。

今回、公園協会のお二人が地下足袋と剪定ばさみをご持参くださったのですが、道具一つにしてもみんな興味津々で見ていました。


「日本人庭師は道具の扱いかたがとても丁寧だ。」


「日本人庭師は、作業中に無駄話をしない。」


などなど、

彼らにとっても、これまでの作業の仕方を見直す、いい機会になっているようです。


まさに両者にとって《Win-Win》の交流。

これが、私が今後の造園業界において、庭師同士・造園家同士の交流が重要で素晴らしい可能性を秘めていると信じずにはいられない理由の一つです。

今後もどんどん広げていきたいと、心から思っています。


ちなみに、今回の視察に関する記事が、東京都公園協会機関誌「都市公園」4月号に掲載になるそうです。

庭園・公園管理に従事されている方には、とても役立つ内容となっています。

機会がありましたら、ぜひご一読下さいませ。



フランスとの造園交流。

皆様も機会がありましたら、ぜひご検討くださいませ。

最後に、この場を借りて、東京都公園協会の皆様に深く御礼申し上げます。



最後までご高覧いただき、ありがとうございました。



水真 洋子