「個性を伸ばそう」

いろんな分野でこの謳い文句をよく耳にするようになりました。

子育て、自己啓発、人材育成、地域おこし、などなど。

個人なり一地域のオリジナリティーを最大限に生かすことが、いい発育や発展を促すというのです。

私は個人的にこの考え方に賛成です。


「みんな違って、みんないい。」


そして、この考え方は、景観作りにも言えると思うのです。


例えば公園。

パリは、公園づくりに関しては、ちょっと《うるさい》街です。

19世紀のナポレオン3世の時代にパリ全体が大規模に改修され、それまで汚かったパリの町が一掃されました。その時に、たくさんの公園とスクエア(広場)が街のあちこちに新たに設置されました。

そのおかげで、現在パリの街には古いのから新しいのまで、多種多様な公園群があります。

現在パリにある公園、庭園、森、スクエアの数は およそ450あまり。

ちょっと歩けば小さな広場や公園に行ける距離にあるのが、なんとも心にゆとりを与えてくれます。



このたくさんある公園の中で、私が一押しの公園があります。

「あ。わかった!チュリルリー公園 でしょ?」


という声が聞こえてきそうですが、

違います(^^)。


確かにチュリルリー公園、リュクサンブール公園、ヴァンセンヌの森、ブローニュの森にあるバガテル庭園などの公園は、フランスを代表する公園で、日本人観光客がも馴染みがあると思います。

私もこれらの庭園は素敵です。

でも、これらに匹敵するか、それ以上 の良さがある公園があるのです。

それが、


ビュットショーモン公園。


パリ19区に位置するこの公園は、1867年にナポレオン3世の命によって建てられました。

当時の造園・園芸・建築技術の英知を駆使して作られたこの公園は、見所がたくさんあります。

大きな湖とその中心の崖の島

(image @ https://ja.wikipedia.org/wiki/ビュット・ショーモン公園)



大きな洞窟とその滝。

(image @ https://ja.wikipedia.org/wiki/ビュット・ショーモン公園)



伸び伸びと茂った木々たち。


これらの見ていると、パリにいることを忘れてしまうほどです。




平坦で幾何学的な従来の庭園(「フランス式庭園」)とは異なり、自然の風景を模した設計がされています(「風景式庭園」)。

 

ここで注目したいのが、この公園の生い立ち(?)です。

もともとこの公園があった土地は、中世は処刑場、その後石切場、屠殺場、ゴミ捨て場、などに使用されていました。

当時の様子です。

処刑場↓

(image @ CHOAY Françoise, “Un parc urbain” in Paysages Territoires. Paris: Editions Parenthèses, 2002, p.137)


屠殺場↓

(image @ CHOAY Françoise, “Un parc urbain” in Paysages Territoires. Paris: Editions Parenthèses, 2002, p.139)


そのため 大変治安が悪い地域でした。

また、土地の起伏がとても急で、あちらこちらに凸凹がいっぱいありました。

その高低差は30m以上も。

オフィスビルでいうと7〜8階建て、マンションだと10階建てくらいの高さです。

当時の様子↓

(image @https://ja.wikipedia.org/wiki/ビュット・ショーモン公園)


まさに問題が山積。


「よし!ここに公園をつくるぞ!」と決定した当時の知事オスマンもすごいですが、本当に公園をつくってしまう当時の造園師たちも本当にすごい!



公園を設計したのは造園家 ジャン=ピエール・バリエ=デシャン。

彼は、この悪条件と言える土地の起伏を、

《大切な個性》

と考えました。

でこぼこを生かした設計をしていきます。

上手に生かして、大きな湖や湖中央にそびえる断崖の島、緩やかな丘群、を大きな滝を作ったのでした。

当時の見取り図です

(image @https://ja.wikipedia.org/wiki/ビュット・ショーモン公園)




こちらがコンテです。

黒色が現況図、赤色線が設計図となります。↓


(Image @ LEVÊQUE, Isabelle., PICON, Antoine. Le parc de Buttes-Chaumont, Etude historique. Paris : Mairie de Paris, 2007)




(image @ CHOAY Françoise, “Un parc urbain” in Paysages Territoires. Paris: Editions Parenthèses, 2002, p.143)



急な高低差のため地滑りが多発し、施工には大変苦労したそうです。



苦労の甲斐あって、7年後の1867年、パリ万博に合わせて見事に完成。

この新しい公園は、周辺の雰囲気を一変しました。

( image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Parc_des_Buttes-Chaumont)


公園のおかげで周辺の地価が跳ね上がり、住宅が次々と建設されました。

今では高級住宅地となっています。

週末は多くの人で賑わいます。

( image @ https://fr.wikipedia.org/wiki/Parc_des_Buttes-Chaumont)




悪評判で技術的にも困難だった土地を、多くの人々に愛される公園へと変えてしまった造園家たち。

いろんな意味で個性を伸ばしまくった公園、ビュットショーモン。



「土地が持つ個性を生かすも殺すも造園家次第なのだ。」



と、造園家の素晴らしさと責任を痛感させてくれる、初心を思い出させてくれる、そんな 公園です。



パリ中心部から少し離れてはいますが、ぜひぜひ訪れてみる価値ありです。

ビュットショーモン公園知らずして、フランスの公園は語れません!



最後までお読みいただきありがとうございました。